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2009年7月17日 (金)

ある科学者の闘病記録

先日、NHKのドキュメンタリーで、戸塚洋二さんという科学者の方を知りました。ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんの愛弟子のひとりです。もう昨年7月に亡くなったのですが、自分が癌患者という立場で、自宅療養をする闘病中、自分の病気を冷静に分析しながら、日々の思いをFew More Monthsというブログに記録していました。

連日、彼のブログを読んでいますが、自分の病気の進行や副作用などを、数字やグラフ、写真を駆使した説明に、科学者としての見解をつぎこんだ執念を感じます。「数字を残して人を説得しないと、認めてもらえないのが科学なんです」と生前の対談で言っていたのが、印象的でした。また、対談で、死ぬ間際のことを、記録に残せないのが残念だと真剣に語っていました。もちろん恐怖も語っているのですが、せっかくそういう機会が自分に近づいているのに、あの世に行ってしまったら戻れないから伝えられない、悔しいという表情に、まったく科学者らしい、と思わず、顔がほころんでしまいました。

考えたり分析したり、調べたりせずにいられない。そして記録をせずにはいられない。本人は科学者の悲しい性と書いていましたが、仕事から離れざるをえなくなったとき、彼は自分のエネルギーを、癌患者としての自分を観察し、分析し、冷静に記録することに向け、他の癌患者も、もっと自らの経験を記録して残さなければいけないという主張を持つようになりました。

たぶん、科学者だけの彼であったら、私はこの人を知ることもなかったと思います。ご本人も、まさか、闘病する姿が映像となり、世に出るとは、予想もしていなかったことでしょう。

彼の研究は、愛弟子たちがあとを継ぎ、今年にひとつの形を成しましたが、残念ながらそれを見届けることはできなかったとのことです。しかし、研究から引退した後の闘病の記録は、彼の力を持って新しい命を持ち、読み継がれていくのであろうものに成長しています。

ブログを読むと、その見解は、病気や専門分野の科学のみならず、日々の政治や大学教育、また、父親としての自分などに及んでいます。感情に流されない理論的な表現で、分析力や裏付けを示し、いまのジャーナリズムの弱点も心地よく指摘します。すごいなと思うのは、批判的な内容のときには、解決のための提案ものせていることです。批判することは誰にもできるのですが、提案をすることはまた別の能力。分析力があってのこと。一流の人は、何をやっても一流なのですね。

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